2018-12-19

JRA日高育成牧場のあしはらです。

馬とともに過ごした平成

 早いもので今年も終わりですね。来年は平成最後の年となり新しい時代を迎えます。

 私が獣医になると決意したのが昭和56年。獣医学科に進学できたのが昭和59年。そして卒業して馬の獣医師としてスタートを切ったのが平成2年。来年は平成31年新元号元年ですから、私の平成は「馬とともに過ごした時代」といえます。今、このブログを読んでいる方にとっては、きっと次の時代が、「馬とともに過ごす時代」となるんでしょうね。

 そして、日高育成牧場の来年明け2歳となる育成馬にとっても、新しい時代が、彼らが競馬での活躍する場となるんですね。

Photo  おそらく時代が変わっても、世界情勢が大きく変わるわけでもなく、日本も今と変わらず、いろいろなことに心配を抱えながら時が過ぎていくのでしょうけど、私たちは私たちなりに、馬と触れ合いながら、いい時代をすごしていけばいいのです。とにもかくにも、来年もよろしくお願いいたします!

浦河獣医師会講習会

 去る12月8日に浦河獣医師会が主催する講習会が行われましたね。行かれた方・・・いらっしゃいますか?今回は「アメリカの馬産」と題して、日高育成牧場の獣医師が講師になり、昨年研修で学んできた内容についての報告でした。アメリカ、ケンタッキー州における繁殖牝馬の管理、分娩と診断、当歳馬の管理、離乳、種付け・・・などを中心に、多岐にわたるものでしたね。生産者、獣医師など多くの方に集まってもらい、興味深く聞いていただくことができました。残念ながら来ることができなかった方は、身近に聞いた人が入れば情報を仕入れていただければと思います。そして自分の牧場との違いを感じながら、今後に役立てていただければと思います。

忍耐と駆け引き

 「年をとると怒りっぽくなる」

 最近は本当に身にしみて感じることです・・・。今まではそんなことはなかったのに、些細なことで怒りを感じることがある。少し前なら我慢できたのに、すぐに口に出してしまう。いけないなあ、直さなきゃだめだよなあ・・・そんなことの繰り返しです。では馬は?この忍耐力について考えたとき・・・どうでしょうか?時として彼らの我慢強さに驚かされることがある・・・なんて経験をしている方もいるのではないでしょう。

 獣医師の場合ですが、多くは、悲しいかな、馬たちから見れば単なる「嫌われ者」でしかありません。もちろん、何もしないで近づけば、他の人と同じように接してくれますが、仕事となれば、検査や治療と称して、彼らにとって、それはそれは嫌なことばかりする厄介者です。厩舎に行って、馬房の前にくると、大半はお尻を向けます。なんと寂しいことか・・・。牧場スタッフにお願いしてつかまえてもらい、やっと触ることができる・・・そのときの従順さを目の当たりにすると、うらやましいなあと思ったりしてね。で、治療が始まると注射を打ったり、診断のためとはいえ、関節を曲げられたり、痛い部分を圧迫されたりで、辛そうにします・・・が、どうでしょう。彼らは結構長い時間、我慢してくれますよ。偉いです。治療が終わると、「ふ~!」と息を吐いて、やれやれ、なんて顔をするやつもいるので、「我慢してくれてありがとう」とお礼を言いたくなることもしばしば・・・。日高育成牧場では、今のところ調教が順調に進んでいますが、その様々な過程の中で、馬とコミュニケーションを上手くとりながら、馬に我慢してもらう場面も多かれ少なかれあります。彼らは納得した上で人間の指示に従い、我慢し続けて、やがては、どんな人の指示にも従ってくれるようになるまで成長してくれます。自分たちの方が大きいのだから、「嫌だ」と拒絶して暴れれば、辛い思いをすることもないのに・・・と単純に思うのですが、彼らはとにかく我慢をする・・・その忍耐力には脱帽なんですね・・・。

初動は大切

 写真は当歳を馬運車に乗せる練習をしている風景の1コマです。

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 血統が良く優秀な繁殖牝馬に良血の種牡馬をつけて生まれてきた子馬で、馴致も調教もしっかりできて、能力が高くても、馬運車に乗ることができなければ目的の調教場、競馬場に行くことができないし、そもそも競馬に出走することすらできません。馬運車馴致は、そういう意味で、極めて重要な練習と言えます。撮影したこの日は、飼養放牧管理の関係で、馬運車で放牧地を移動する必要があったため、慣らしの練習をしているところでした。素直に乗るもの、少しずつ様子を見ながら乗るもの、馬運車自体を怖がりなかなか近寄らないものなど様々です。それぞれの性格を汲み取りながら、馬が嫌がらないように誘導します。どんな馴致でも言えることですが、一つやり方を間違うと、その担当者の言うことを聞かないどころか、人間自体の言うことを聞かなくなったりします。競走馬としての生活をしていくからには、いろいろな人と係わっていくことになるわけですから、この人の言うことは聞くけど、他の人の言うことは聞かない・・・では困ったことになります。よく、馴致育成はおなかの中から始まる・・・と言う人もいますが、とにかく日々積み重ねが大切だということなんだという意味も含まれていると思います。

ひと芝居うつ

 人でも会社主催の健康診断があると思います。そこで必ず実施するのが採血ですね。馬も同じで、一斉の定期健康診断があります。トレセンには東西合わせて4000頭の馬がいるわけですから、中には枠場に入れても注射できない、枠場にすら入らず注射させないなど個性的な馬が何頭かいるものです。まさに獣医泣かせの馬ですが、ではこれらの馬は厩舎でも言うことを聞かないかといえば、そうでもない。むしろ逆で、大人しかったりするんですが、そういう馬は大概頭が良いんだと思いますね。人の心を先読みする能力が高いんだと思います。まだ、私が2、3年目のころだったか、ある厩舎にそんな頭の良い馬がいて、厩舎と協力して大芝居を打ったことがありました。厩舎の人には全員出てもらって通常どおりの作業をしてもらう。獣医は2人で、ファンを装い普段着でその馬の隣の馬房でその馬の顔をなでたりする。担当厩務員には飼葉をつける作業をしてもらい、馬が飼い葉桶に近づく隙を狙って、採血。馬も驚きを隠せない表情で、やられた~と思ったかどうかはわかりませんが、そのときだけは観念して採らせてくれました(その次はまただめだったんですけど・・・)馬との駆け引きは奥が深いなあ、とそのときしみじみ感じました。

 いつものように個人的な見解ですが、大人しい馬ほど、

 「人間ごときに素直になれるか!スキあらば人を出し抜いてやろう」と思っているんでしょうかね?なんでもさせてくれる馬は

 「お前が頼りないから、言うこと聞いている振りをしてあげているんだよ」なんて、上から目線だったりするんですかね?

 馬とどんな関係を築けるかは、とにかくあなたの腕次第。自分の理想の馬をつくるため、辛抱強い馬を相手に、いろいろな機会を作って触れ合いながら、駆け引きしながら勉強するといいと思います。

 今回もお付き合いありがとうございました。また来年!!

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