JRA日本中央競馬会 日高育成牧場

2020-03-11

JRA日高育成牧場です

 前任者よりバトンタッチし、今回からこのブログを担当させていただく内藤です。どうぞよろしくお願いします。

JRAで仕事をして25年になりますが、今回の人事異動に伴い初の北海道での生活となります。出張などの仕事はもとより、観光等で北海道を訪れる機会は数多くあり、ずっと憧れていた土地です。しかし、実際に住む事になってみると楽しみと不安とが重なり合う気持ちになったのも事実です(このブログの読者の方の中にも馬に関する仕事、北の大地での生活などに希望を持っているものの漠然とした不安も併せ持っている方もいるかもしれませんね)。

寒い・・、遠い・・、交通が不便・・、買い物に困る・・などなど、確かにそのとおりではあるのですが、あまり大きな問題ではないことを実感しています(住み始めたばかりな者が生意気言ってスミマセン)。でも、このことは事実としてこちらで楽しく生活や仕事をされている方がたくさんいることからも明らかなのではないでしょうか。

プライベートな話になり恐縮ですが、先日、ほんの半日ですがカメラを持って趣味のひとつであるバードウォッチングをしていると、電柱にとまっているオジロワシと放牧地で羽を休めるヒシクイに出会い写真に収めることができました。どちらも天然記念物で、本州のバードウォッチャーには羨望の鳥なのです。こんなに気軽に、貴重な体験ができるとは・・すばらしい所です。

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〔写真1. オジロワシ〕

(全長約80cm翼開張約200cmの大型猛禽類、北海道へは冬季に飛来、浦河にて撮影)

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〔写真2.ヒシクイ〕

(全長約90cm翼開張約160cmのガンの仲間、本州の越冬地から北海道を経由してユーラシア大陸北部に帰る途中、三石にて撮影)

仕事についても日高育成牧場をはじめ周辺の生産牧場、育成牧場は繁忙期を向かえ、とても充実した日々を送っています。JRAの生産育成研究室では出産シーズンを向かえ、現在2頭の出産を無事に終えたところです。また、JRAブリーズアップセールに向けたJRA育成馬の調教も佳境を迎え、調教強度も一層アップしてきたところです。

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〔写真3.本年最初に生まれたJRAホームブレッド〕(生後6日目)

 来たるべき春が、それぞれの人馬にとって素晴らしきものになるよう、職員一同、北の大地の生活を楽しみながら、真剣に仕事に取り組んでいるところです。

読者の方々の中ので、馬の仕事に興味がある方、北海道・・とても良いところですよ。一歩を踏み出してみませんか。

2020-02-14

JRA日高育成牧場のあしはらです

バトンタッチ!

 このブログも書き続けて3年近くになりますが、このたびのJRAの定期人事異動にともない、執筆を交代することとなりました。私はブログとのかかわりは多いほうで、「北の研究室から」「常磐馬温泉ブログ」「函館馬温泉ブログ」そして「BOKUJOBブログ」と書いてきました。過去に読んで下さったことのある方ならわかると思いますが、偉そうに語る割には中身が無いし、間違いも多いし、文章は稚拙だし、あまりいいところがないブログだなあ・・・なんて思った人がほとんどだと思います。でもそんな中で、ホント少ないながらも応援してくださる方もいたので、それを励みに頑張っていました。

いつも心がけていたこと・・・それは、

「自信をなくしている人、無くしかけている人を元気にすること」

でした。何かに打ち込んで自信のある人や馬が好きで好きで仕方がない人は心配しませんが、せっかく馬に興味があって、何らかのかかわりを持ちたい、できれば仕事で馬に関わりたいと思っているのに、自信がないとか、どうせ私には無理とか、あと一歩が踏み出せないとか諦める人・・・沢山いると思うんですよね。そんな人たちに一番大切なものは「きっかけ」であり、私は「きっかけ」をとても大事だと思っていて、とにかく「馬の仕事っていいものだよ!」という気持ちを伝えたくて、筆を走らせていました。研究って難しそうだけど、興味と情熱さえあればできることだし、温泉で馬がどんなことを思い、どんな風に過ごしているのかを伝えることで、馬の良さを伝えることができると思ったし、馬に乗るのには多少の努力が必要だけど、馬にはちょっとしか乗れなくても、いろいろな形で関わる方法があるということを伝えたかったし・・・。私はこれを最後に執筆から外れますが、馬のブログは他にもいろいろあるので、とりあえず何でもいいから読んでみて、それで元気になる人、やる気の出る人、やさしくなる人が増えるといいなあと思います。

最後もちょっと、偉そうでしたか?

まあ、今回は区切りですし・・・許してくださいね。

 

もう、2月も下旬・・・。3月になれば育成馬もBUセールに向けて仕上げのシーズンになります。繁殖ではお母さんたちの出産も始まります。明け1歳の若馬たちは、少しずつ大きくなって、秋からの馴致調教に向けて体力をつけていきます。まもなく春がやってきて、日高育成牧場のあわただしい毎日がそれぞれの形で過ぎていくことでしょう。

  

 

それでは皆様、長い間お付き合いありがとうございました。またどこかで!

 次の人にバトンタッチ!

Jra

2020-01-16

JRA日高育成牧場のあしはらです

令和2年

 今朝の気温はマイナス7度・・・寒い日が続いています。が、12月の北海道は日本海側北部では例年どおりかやや少なめの積雪も、太平洋側に位置する浦河は雪が少ない感じでした。ということは、1月になれば、帳尻をあわせるがごとく雪が降り続くんだろうなあ・・・という不安は的中せず、年が明けてもほとんど降らず、道路のアスファルトは乾き、おかげで車の運転が気分的に楽でいい感じの令和2年のスタートでした。それにしても、長年北海道で暮らしている私ですが、札幌の積雪が1月に1桁というのは記憶にないですね。雪もあまりに降らないと、スキー場、農家の方など困る人も出てくるわけで、何事も丁度いいところで収まるのがいいんでしょうけど・・・。上手くいかないものですね。

さてさて、あらためまして、令和2年となりましたが、皆様、各地でどのように新年を迎えましたか?浦河の新年は、毎年恒例になっていますが、西舎神社の騎馬参拝で幕をあけました。

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子供たちが馬に乗って参拝する姿を見ると、1年の始まりだなあ・・・と感じますね。

昨年はラグビーワールドカップで予想以上の盛り上がりを見せましたが、今年は何と言っても東京オリンピックですよね。今からとても楽しみです。馬術競技も新しくなった馬事公苑を舞台に行われますね。JRAも縁の下の力持ち的な立場で頑張って応援しますよ!

そして日高育成牧場の育成馬たちですが、昨年に引き続き、覆い馬場800m走路、坂路コース、トレッドミル等での調教が続けられています。昨年生まれの若馬たちはそろって明け1歳となりました。体重も350kgに達したものもいます。繁殖牝馬は3月出産予定が集中していますが、みんな元気に過ごしています。あと1ヶ月もすると、いろいろあわただしくなってきそうですね。

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 何はともあれ、新しい時代の始まりです。皆さん、張り切っていきましょう!


寒いときこそ

 暑いのが好き、苦手・・・寒くても平気、苦手・・・人それぞれだと思います。私は北海道生まれということもあってか、暑いのはとても苦手です。では、寒いのは好きかと言われると、そうでもないのですが、暑いのよりは我慢できる・・・感じです。大学は帯広でしたが、真冬の大学近辺は冷え込みが厳しく、天気予報でマイナス15度とか20度という発表でも、実際はマイナス30度なんて日がよくありました。今回は、そんな、寒さの自慢話ではなく、寒い時期だからこそ考えるべきこと、感じ取るべきことを書いてみたいと思います。ごく簡単で当たり前なことばかりですから、構えず気楽に読んでもらえばと思います。いつもどおり、私独自の考えが入っていますのでご了承願います。

 

天気予報 毎日見ていますか?

 馬を管理するとなったら、やはり天気予報を見る習慣をつけるべきでしょう。特に山間部に位置する牧場であれば、突然の大雨や強風など、特異的な天候の変化に気をつけないといけません。もちろん自然相手ですから、わからないこと、予測できないことがあって当たり前ですが、天気予報を確認しつつ、自分が肌で感じるものを大切にしたほうがいいです。例えば、簡単なところでは気温を耳で感じ取ることでしょうか。私の場合、「耳が痛くなったら氷点下」です。手袋をはいて(北海道弁。正式には、はめて。)いるのに指先が冷たく感じたらマイナス5度、痛く感じたらマイナス10度、鼻毛が凍ったらマイナス20度以下です(もちろん、感じ方は個人差あり)。日高育成牧場は敷地が広いこともあって、初冬では事務所エリアでは雨が降っているのに、山に近い育成調教エリアでは雪が降っているなんてことがあります。また、事務所エリアではやや寒い程度なのに、育成エリアよりさらに山に近い分場では、耳が痛くなるほど寒く感じる日があります。

皆さんも、放牧場で過ごす馬の様子を、気候と照らし合わせて観察してみると、馬がどんな風に感じているのかを読み取れるようになるかもしれません。毎日見ながら、大切なことに沢山気づくことができるようになれるといいですよね。


水の管理は大丈夫ですか?

 人にとっても馬にとっても、命の源である水はとても大切なものですよね。夏は熱中症にならないように十分な量を与えて管理することが大切となり、いろいろ気配りをすると思うのですが、寒い冬だって水は欠かせません。とにかく乾燥しますしね。人でも問題になりますが、ウイルス感染症も流行りやすい季節とも言われています。寒いと冷たい水を扱うのは大変ですよね。誰もが気分的に辛さを感じるはず・・・。実際に馬は水をどのくらい必要としているのか・・・科学的に分析して数字に出すのは結構難しいものですが、やはり個々の馬がどのくらい飲んでいるかを観察するのはとても大事なことだと思います。今は便利なウォーターカップなどがありますから、見た目で必要量を単純に把握するのは大変ですが・・・。また、冬は水が凍るという問題もあるし、水道もしっかり落として(水の元栓を締めておくことを「落とす」と言います)おかないと凍結破裂で厄介なことに・・・なんてこともありますね。1月も下旬ともなれば出産が近い馬もいるはずですから、ますます水分補給は大切になります。効率的で把握しやすい水の管理法をあなた自身で考えるべきでしょう。


放牧地の雪の状態は?

 日高、胆振、十勝・・・例年、雪が少ない地域とはいえ、積もるときはあります。雪が少なく低温で地面が凍っているときは、滑りやすいところがないかよく見て回ることです。またでこぼこが多いまま凍ると、蹄に悪影響を及ぼすことがあります。冬は乾燥しやすいのでなおさらです。人でも乾燥すると指先がガサガサしやすい人・・・いますよね。ドカ雪が降ったときは、放牧しても馬が動くことができません。除雪が必要となりますよね。また、馬はどんなに雪が積もっても、気に入った場所を掘り続けて草を探そうとします。どこの牧場でも乾草を放牧地に備えているとは思いますが、雌馬は上下関係が厳しいですから、どの馬もしっかり草を食べているか、仲間はずれにされていないか注意して観察するべきでしょう。最後に馬を曳くときは人も滑らないように注意してくださいね。いつも通る道に危険がないか毎日チェックするべきでしょう。冬は雪や気温で毎日状況が変わりますから油断は禁物です。滑り止め用の砂や馬の健康に影響のない凍結防止剤、融雪剤などをうまく利用しましょう。先に感染症に注意することについて少し書きましたが、消毒薬の管理と使用方法もしっかり押さえておきましょう。低温では消毒効果が落ちる場合があるので注意が必要です。

 内容が薄くて恐縮ですが、寒いときだからこそ気をつけること・・・なんとなく伝わったでしょうか。まだまだ他にもあると思いますよ。いろいろ考えてみてください。氷点下での作業はきついですが、春はすぐにやってきます。元気に体を動かして頑張っていきましょう!

 

今回もお付き合いありがとうございました。

 

 

 

2019-12-19

JRA日高育成牧場のあしはらです

冬本番

 今年のインフルエンザの流行は早かったですが、寒い毎日、皆さん体調を崩したりしていませんか?私は年齢を重ねた分、冬を迎えるたびに体力の衰えを感じています。しかしながら、このブログを読んでいる方は、若い方や馬を愛する元気で意欲的な皆さんでしょうから、余計な心配はしていませんが、とにかく最近は異常気象となることもありますから、馬だけでなく自身の健康管理にも十分に気を配ってください。

さて、日高育成牧場の育成馬ですが、進度に多少の差はあるものの、馬場内での騎乗を順調に実施しています。雪と気温の関係で写真のような1600mの馬場を使用しての調教はできませんが、800mの覆馬場、坂路コースに、乳酸値を意識しながらのトレッドミルを組み入れながらの調教が行われています。繁殖関係では、妊娠馬は分娩用の馬房および放牧地のエリアに移動して、来年の出産に向けての準備が始まりました。種付け予定の繁殖にはライトコントロールを開始し、若馬たちもそれぞれのペースで元気に過ごしています。令和になって初めての年越しになりますが、馬たちはもちろんのこと、私たちも寒さに負けずに元気に過ごしたいものですね。

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育成馬検査 強い馬づくり講習会 ウマ科学会

 先月中旬まで振り返ってのお話になりますが、育成馬の第1回目の馬体検査が行われました。調教の進捗状況と各馬の動きを見た後、1頭ずつ展示して馬体のチェックを行いました。毎年のことですが、順調に過ごしているもの、思ったように進んでいないもの、厄介な問題を抱えそうになっているものがいるのは毎年変わりませんが、例年に比べると大きな問題点を持つ馬は少ない印象でした。得られた情報はスタッフで共有して今後対応していくことになります。

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 同じく先月の中旬には、毎年恒例の「強い馬づくり講習会」が行われました。例年どおり、浦河、門別の2ヶ所で実施されどちらも盛況でした。今回のキーワードは「乳酸」。これまで単純に「疲労物質」として認識されることが多かった乳酸ですが、調教を実施しながらその値を測定することで、調教の進捗状況を考えることができる、乳酸もエネルギーとして利用されている・・・そういった内容の講演会でした。研究者からの視点、現場からの視点の両方を聞くことで、聴講した側にもわかりやすいものとなり、牧場関係者の皆さん全員が有意義な時間を過ごせたようです。

 そして、こちらも毎年恒例ですが、JRA内の競走馬に関する調査研究発表会と日本ウマ科学会学術集会が先月下旬に開催されました。多くの馬関係者が全国から集い開催され、盛況のうちに終わりました。詳しい内容については、参加された方や馴染みの獣医さんから是非情報を仕入れていただければと思います。

痛い!・・・どのくらい?

 唐突ですが、あなたは痛みに強いほうですか弱いほうですか?

私は比較的強い方だと思っています。実は過去に重い神経の病気で2年ほど悩まされた経験があって、ある程度までの激痛なら耐える自信があるんです(私の場合は背中でした。あの時は19歳と若かったから・・・今はどうかなあ)。しかしながら、単純に「痛み」と言っても、実にいろいろな種類というか特徴があると思いませんか?例えば・・・

頭が割れるように痛い

針に刺されたように痛い

お腹がしくしく痛い

歯がジンジン痛くて我慢できない

などなど、人は痛む場所や程度によっていろいろな表現をしますね。馬はものを言わないから、私たちが痛みの程度がわからないのは当たり前ですが、そもそも人と人の間でもわからないと思いませんか?頭が痛い人が2人いたとして、お互いにこんな風に痛い、どのくらい痛いと言い合ったところで、結局相手が自分と比べて痛みが強いか弱いかはわからないですよね?痛さを理解することは難しい・・・と私は思いますが皆さんはどうですか?

しかしそんな中でも私たちは、痛みのサインを出す馬の苦しみを可能な範囲で、できるだけ的確に理解して対応する必要があります。馬では疝痛を診る機会が多いですが、痛がり方も実に様々で個体差があります。でも、わかりにくくても注意したいポイントはあると思います。そこで私の考える馬の注意したい痛がり方について少しお話したいと思います。独断と偏見で語るところはいつもと同じですのでご了承ください。

注意したい痛がり方とは

 馬が病気になって何らかの原因で痛がっている・・・一番注意したいこととは?

それは場所や程度に関わらず・・・24時間続く痛みかどうか・・・です。

例えば、肢のどこかを骨折しているとします。しかもそれは骨折している肢を地面につけないほどの骨折だとします。見た目はものすごく痛そうで重症です。しかし肢を浮かせていればそんなに痛いわけではない感じにも見えます。でも一日中浮かしていると、残る3本の肢に負担がかかりそうで心配です。多くの獣医師は痛みをコントロールする目的で鎮痛剤を中心に処方すると思います。すると賢い馬では、そうっと痛い肢をついて踏み変えたりします。しかし警戒心の強い馬は寝ることもなく我慢して立ち続けます。一般に3本肢の状態が長く続くと蹄葉炎になりやすいと言われますが、賢く振舞う馬では24時間痛みが続かないように自身で工夫すると思います。で、アクシデントがない限り峠を乗り越えて、あくまでも経験的な私見ですが、良好な経過をたどることが多いと感じます。

一方、目の角膜に傷を負った馬がいるとします。競馬では前の馬が蹴り上げた砂などが目に当たって傷を負って角膜に炎症を起こすことがあります。目の創傷は意外と厄介で、感染して悪化すると治るのに時間がかります。はじめは点眼薬と痛み止めを併用して様子を見ることが多いのですが、時に炎症は思うように治まらず、24時間涙が止まらず痛がることがあります・・・。眼帯をしてこすらないように疼痛ケアしながら治療して様子を見るのですが、経過が思わしくないと、激しい痛みと重なって悪化することがあります。皆さんも結膜炎や物もらいを患い、ものすごく痛くて我慢できない経験をした方もいるかも・・・辛いですよね。目薬をさしても24時間痛みが続く・・・。馬もきっとこちらが予想する以上に痛い状況で、その痛みが原因で体の中で悪い反応が起こるかもしれません。

 このような角膜炎のように、軽ければ問題ないけど、油断すると24時間痛みを感じる可能性の強い病気は他にもあって、例えば皆さんよくご存知の疝痛、それから牝馬がかかる乳房炎、化膿性の飛節炎、重度のフレグモーネなどが挙げられるでしょう。ここで言いたいことは憂鬱に感じて痛みが持続する傾向のある病気に注意したいということです。油断することなく、馴染みの獣医さんとよく相談しながら対応すべきでしょう。

痛い仕草を分析する

 多くの場合「ん?いつもと違うな」と感じて「どこか痛いのかな」となるわけですが、その痛がり方を見て、気にしなくていいものなのか、深刻な状況なのかをできるだけ早く正確に察知する必要があります。

・異常に汗をかいている

・すぐ寝る

・やたらと馬房内を歩きまわる

・局部が熱を持ったままである

・触っただけで嫌がる

 こんな場面に遭遇したら、もしかすると、24時間どこかが痛いパターンの症状なのでは・・・と疑ってよく観察するべきでしょう。しかしながら、

・運動したから、暑いから、ただ汗をかいている

・疲れたから、眠いから寝ている

・見たことがないものが見えて興奮して歩き回っている

・少しずつだが解熱している

・もともと触られるのが嫌い

 それだけのことかもしれません。これらの判断力は、日頃の観察と経験を積むことで身につくようになるでしょう。馬の痛みのサインは早期発見、正確な状況把握が重要です。痛みの解釈は本当に難しくて奥が深いものですが、馬の痛みが手に取るようにわかるようになるとうれしいですよね。そうすることで、あなたと馬の心の距離が縮まりますよ!

 

今回もお付き合いありがとうございました。

2019-11-01

JRA日高育成牧場のあしはらです

はじめに・・・このたびの台風19号、21号では多くの方々が被害にあわれました。本当に心が痛みます。辛い思いをされている方が多くいらっしゃるとは思いますが、どうか、周りの協力などを受けながら、一日も早く日常の生活を取り戻せるように祈っています。

落ち葉の季節

 11月に入り、寒さも徐々に厳しくなってきました。木々は紅葉、道路、放牧地には落ち葉が積もり、時折吹く突風も肌に冷たく刺さる感じです。そんな中で日高育成牧場の育成馬、当歳馬、そして繁殖牝馬はそれぞれ元気に過ごしております。育成馬はセプテンバー入厩組も概ね騎乗するまでになり、全馬そろっての調教ができつつあります。当歳の半数は体重が300kgを越えるまでに成長し、馬らしくなってきたなあと言う感じです。これから寒さで地面も硬くなり、氷が張って雪が積もってくると、足元への影響にも注意しながらの管理となってきます。何事もなく過ごしていってほしいと願うばかりです。

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 たびたび話題になっている豚コレラ、アフリカ豚コレラ・・・。皆さんも一度はニュースなどで聞いたことがあるのではないでしょうか。私も情報を得るべく、10月下旬に開催された、家畜保健衛生所の方が集まって毎年実施している業績検討会に参加し話を聞いてきました。感染源となるイノシシ、小動物を中心とした野生動物の侵入をどう防ぐかが大切であり、それがどんなに難しいことなのか・・・いろいろ考えさせられました。そして私たちも決まりをしっかり作り、防疫対策を立てて、規則正しく行動しなければいけないことを痛感しました。豚コレラは、徹底的に対策を講じても、伝播力が強くて再発生することがあるそうです。これからワクチンの使用を含めた対応について、関係者で話し合いを重ねていくことになりそうです。またアフリカ豚コレラの場合は、ワクチン開発も難しいそうで、より徹底した対策が求められるようです。私たちが管理する馬の場合でも防疫対策は重要です。対岸の火事と思わず、しっかり管理をして伝染病から愛馬を守っていきましょう。

馬フォーラム オータムセール 当歳品評会

 先月のことになりますが、機会をいただいて帯広畜産大学で開催された馬のイベントに参加してきました。JRAも何か協力できれば・・・いうことで、ターフィーの馬術ショーや乗馬体験などのイベントを開催しました。そのほか他団体による体験乗馬会、クイズラリー、馬の学校ミニ講義、馬の介在活動関連資料展示、馬の骨格標本展示などがありました。また夕刻には、馬の国際講演会と称して、フランスと韓国から講師を招いて、馬の利活用に関する講演も行われました。このような催しは、馬産地である北海道に特化するのではなく、いろいろな地域で類似のイベントが開催され、馬が今以上にいろいろな場所で身近な動物になるのが理想です。来年以降も様々な地域で馬のイベントが開催され、盛り上がることを期待したいと思います。

 そして、市場では1歳馬最後のオータムセールと繁殖セールが開催されました。なかなかの好成績だったようで、1歳セール全体では昨年並みの成績だったとか・・・。また、浦河地区で毎年開催している当歳馬の品評会も先月末に行われました。今年は9頭の参加で、各牧場から選抜された当歳馬を見てまわりました。代表者の細かいコメントを聞きながら、いつも勉強になる品評会。今後も継続して実施してもらいたいと願っています。

見る触る透かしてみる

  「先生、うちの馬、あしはれているんだけど、ちょっと診てくれる?」

そんな風に往診を頼まれるたびに、ドキッとしていた駆け出しの頃・・・。

病気の馬の診療では、競走馬ということもあってか、四肢の診察をする機会がとても多いです。市場の下見などでは、購買を検討している馬の屈腱部を触ったり、少し腫れている部分の状態を念入りに確認したり・・・なんて光景を見かけることが多いと思います。また、調教のあとや、レース前、レース後などでも、管理している調教師さんが肢を触って状態を確かめる場面も日常的に見ます。言うまでもありませんが、競走馬の肢は細くデリケートで、強い調教やレースではかなりの負担をかける部分ですから、ちょっとした変化でも見逃さず、触って異常がないか確かめることが重要になります。

そこで今回は、馬に関わる多くの人が、どんなところに注意して、どんなことを考えながら肢を触っているのか・・・ごく簡単に触れてみたいと思います。専門的な突っ込んだお話はいっさいしません。ごくごく簡単にまとめて書いていますので、どうぞ気楽に読んでいただければと思います。また、いつもどおり私独自の考え方が入ります・・・ご了承ください。

見た目

まずは見た目から・・・。前から横から後ろから大雑把でいいので、よ~く見ることです。先輩に習ったことをあれこれ考えながらだと、頭の中でうまく整理できないですから、ポイントを1つに絞って、例えば「いつもと比べて腫れているところがないか」という一点だけに集中して単純に観察してみましょう。腫脹の程度は極わずかの場合もあります。また個体差もあるので、普段から多くの馬を見て比較することで慣れる必要があります。少し時間がかかるかもしれませんが、アドバイスなどもらいながら、まずは目を慣らすことから始めてみてください。

やはり各部位で押さえておくポイントはあります。腕節や飛節では前面・・・。ちょっとした腫れでも見逃さないことです。骨折、感染症などが疑われるケースもありますが、些細な怪我が原因でも大きく腫れている場合もあります。また、紛らわしいケースもあって、前腕部や下腿部などに炎症があって腫れていたものが、時間が経って、腕節飛節に腫脹が下がり異常があるように見えることもあります。そして、過去に腫れを認めたことのある関節では、落ち着いてしばらくたっても、ひかずに残っていることもあるので、新しいものか古いものか見比べる必要があります。

 管部では前と後ろでは、腫れの意味合いが大きく異なりますね。前方や側面の腫れではケガや骨の炎症などが疑われることが多いでしょう。しかし後ろの腫れでは、腱靭帯の炎症が疑われます。それぞれ腫れている箇所、程度、痛みなどを詳細に調べて、時に獣医師のアドバイスや治療を受けながら判断する必要があります。なので、前よりは後ろの腫れに注意して観察するべきですね。競走に大きな影響を及ぼす可能性のある屈腱や繋靭帯などがありますから、場合によっては超音波検査などで状態を詳しく知る必要性も出てきます。

感触

 ひととおり見終わったら気になる部分をよく触ってみましょう。先に触れたように、市場の事前下見などでは、調教師や購買者の皆さんが、足元を念入りに触っている姿を見ますが、誰もが触った自分の感覚をとても大切にします。感じ方は人それぞれです。これも初めは人のアドバイスを聞きながら一緒に触って、第一に熱感を確かめ、続いて気になる腫脹の感触を確かめてみましょう。先ほど述べたように管部の後ろ側、屈腱、繋靭帯部分は特に重要です。そして、今はレポジトリーの提出も必須の時代ですから、レントゲン写真の確認をしっかりしつつ、腫脹した部位の感触を確かめます。

感触もいろいろな表現の仕方がありますが・・・例えば骨のような硬い腫脹、刺激が強すぎると破れてしまいそうなやわらかい腫脹、中に水が溜まっているような弾力のある腫脹、押すとへこんだままの腫脹などなど・・・。経時的に炎症がひどくなっていく途中の腫脹なのか、ある程度峠を越えて、炎症が治まっていく途中の腫れなのか・・・そのあたりの判断は非常に重要ですが、これらは日頃の経験がものをいうところです。どんな感触なら大丈夫なのか、要注意のときの感触はどんなものなのか・・・いろいろな馬を触って、人にも聞きながら、自分独自の感じ方を身につけましょう。

透かしてみる

 透かしてみる・・・とは変な言い方ですが、これは、ある程度経験を積んだ人に勧めたいことで、要は「解剖」の勉強をしてもらいたいということです。骨の名前、骨の位置や部位の名前、筋肉や腱の名前、筋肉の位置や始まりと終わりの部位など・・・。沢山あって覚えるのも面倒くさい、難しいと思う人も多いですが、最初は自分の覚えられる範囲でいいと思います。運動に関係する部分に限定してしまえばそんなに多くはならないはずです。一度覚えきってしまえば、肢のよく骨折する部分や炎症を起こしやすい腱靭帯部分をより理解しやすくなるし、皮膚の奥が透けて見えるようになってきます。

 

少し、薄っぺらな内容だと思うのですが、とにかく一つのきっかけにしてもらえればという思いで書いてみました。見る、触る、透かす・・・これが大切です。今回は触れませんでしたが、蹄も馬にとっては重要な部分です。馬を見るときは、あわせて理解したいものですが、また、別の機会にお話できればと思います。

今回もお付き合いありがとうございました。

2019-10-03

JRA日高育成牧場のあしはらです

セプテンバーセール

 皆さんお住まいの地域は台風大丈夫でしたか?千葉の皆さんは停電が長引いて大変でした(今でも完全に復旧していないところがあるようです・・・)。予想以上の風で、思わぬ被害にあった場所も・・・。北海道は台風とは無縁だったはずですが、最近では異常気象で台風は大型になり、進路も多様となって襲ってくるようになりました。線状降水帯なんていう単語も日常的になり、50年に1度のこれまで経験したことがない大雨、川の氾濫・・・なんてニュースが流れることも珍しくなくなりました・・・。直前に危機が迫らないとなかなかできないものですが、防災に関する様々な知識を持って、できるだけの備えが必要な時代だと思います。

 さて、市場ですが、今年初の試みであるセプテンバーセールが先月開催され盛況のうちに終了ました。昨年との比較はできませんが、周囲での評価を聞いたところでは、高い売却率で好成績だったと言えるようです。JRAも予定の頭数を購買しました。これで今年の1歳市場はオータムセールを残すのみとなりましたが、私はこちらも視察する予定です。

 そして育成馬ですが、サマー以前の入厩組は、順調に馴致が進んでいます。早いものでは、9月中旬からドライビング、ペン騎乗に入っているものもいます。この原稿がアップされる頃には、800m馬場での騎乗も始まっている馬もいるかも・・・。また、セプテンバー入厩組も早々に馴致を開始し、サマー以前の入厩組に追いつくべく頑張っています。各育成担当者は、馬の状況に合わせながら、あせらずに進めている感じですかね・・・。

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Photo_4 当歳も離乳から約1ヶ月が過ぎたところですがすくすくと育っています。毎年、雪が降り始めるまでの間は、場内でも比較的草の質のいい放牧地で様子を見るようにしています。はじめは、離乳に放牧地の移動が重なって、ストレスを感じている様子の馬もいましたが、すぐに落ち着き、体重が300kgを越える馬も出てきました。とにかく、若馬の成長で大事なことはバランスですので、馬体をよく観察しながらしっかり管理していきたいと思っています。

大丈夫なほうから

「あしはら!跛行の馬を見に行くぞ!」

 駆け出しの頃・・・いろいろな先輩に連れられて診療に行ったものでした。

 ある日のこと・・・右前肢の球節の部分に異常を認めるとのことで診療していたときの話です。骨折なのか、腱靭帯の炎症なのか、ただ腫れているだけなのか・・・微妙な症状を示す症例で、とりあえずは、

「触診してみよう」

 と、いうことになり、診察が始まりました。触診は獣医師によって、やり方が違うものですが、その先輩は比較的ゆっくり丁寧に行うタイプの人でした。必要な聞き取りを行い、歩様の確認をしたあと、先輩はおもむろに左前肢から触りだし、押したり曲げたり叩いたり・・・

「ん?疑っているのは右なのでは?」

 と、思いながら診療の様子を見守っていました。左前肢の球節、管部、腕節などの触診をじっくり行い、ようやく右前肢の触診に移りました。そして球節を曲げて、馬が痛いそぶりを示したところで、レントゲンを撮って骨折を確認して、一連の診療が終わりました。私は帰りの往診車の中で聞いてみました。

「どうして、右と疑っているのに左を念入りに調べたんですか?」

 すると先輩は、

 「人でも馬でも、いきなり痛い所を触られたら嫌だろう?馬は何処が痛いのか言ってくれないから、時に触られて嫌がっているのか、痛くて嫌がっているのかわかりにくくなる馬もいる。だから、俺は大丈夫なほうから触って馬の反応を見ることにしている。」と・・・。

 もちろん、獣医師によって診療方針に違いがありますし、跛行のケースにもよっても違いが出てくると思うのですが、自分も多くの経験を重ねていって、あとから「なるほど、時には、反対の肢から診ることも大事なんだな」と思うようになりました。跛行診断は本当に難しくて、壁にぶつかることが多いのですが、そんなときこそ「振り出しに戻り、大丈夫なほうから触ってみて原因を探っていこう。」と考えるようになり、診療の幅が出るようになりました。若い頃の経験は貴重なものばかり・・・。今でも駆け出しの頃の記憶の一つとして鮮明に残っています。

「皮膚病が多くて嫌な季節だね。」

 特に足元がじめじめとした環境にさらされやすい季節は、球節から下の部分の皮膚病に悩まされる馬が増えます。

「あしはら!この馬の皮膚病どう思う?」

 そう先輩に言われて診たときのこと・・・両後の球節以下に皮膚病があり、特に左に比べて右後肢の皮膚病が酷くて、触ると激しく痛がる感じでした。

 「でも両方を比べると、見た目はあまり変わらないように見えるよな・・・強いて言えば、黄色く膿んでいるところがあり、痛さも違うような・・」

そんな感じで悩んでいると

 「先生、前にもらった薬の効きが悪いから、違うの作ってくれる?」

とは厩務員。詳しく聞いたところ、前に処方した薬では、痛いほうの肢にはあまり効いてないということらしい・・・。でも痛みの強さ以外では、左右で大きな違いはないよなあ、どう処方しようかと思っていたところに先輩が

「痛みの強い肢と、比較的大丈夫そうな前肢も含めて見比べて何か違いを感じないか?」

しばらく、4本の肢を眺めながら、ヒントをもらいつつやっと気がつきました。

「白斑があるかないかの違いか!」

 その馬は、右後肢だけ球節以下に白斑のある馬だったのです。

 一般に、馬の特徴の一つである肢の「白斑」は、まったく珍しいものではありませんが、白斑のある肢に皮膚病が起こると、たちの悪い細菌や真菌に侵されることが多いというのは事前に教えてもらっていたことであり、大事なことでした。したがって、その原因となる菌に合った抗生物質などを皮膚病の薬に正確に混ぜないと治りにくいものだったのです。うっかりというか、間が抜けているというか・・・患部だけでなく、大丈夫なほうの特徴とよく見比べて対応するべきでした。 

 少し、わかりにくい例だったかもしれませんが、わからなくて行き詰ったときは、あえて、大丈夫なほうの馬から、大丈夫そうな他の部分をじっくり見る、見比べることも大切だといいたかったのです。これは馬に乗るときでも似たようなケースがあるのではと想像します。馬にも個性があり、乗った感触は千差万別でいろいろ違うと思います。乗りやすい、乗りにくい、癖がある癖がないなど、ベテランの人が感じる微妙な違いも、駆け出しの人にはわからない、そして壁にぶつかる・・・そんなことがあると思います。見て聞くだけではなかなか身につかないでしょう。

   大丈夫なほうを見て、見比べて勉強するべし

 人によって、技術の習得に時間がかかる人、かからない人・・・いろいろで、時に身につかなくてあせることもあるでしょうね。でも見方を変えれば、それもあなたの個性ですよ!しょんぼりしないでください。そういう時は、基本に戻り、なんでもない馬を眺めて、人のアドバイスももらって、自分なりのペースで壁を打ち破れるように頑張ってみればいいのです。知らないことがあることに気づいてよかったとポジティブにとらえればいいのです。扉はいつか開きます!

今回もお付き合いありがとうございました。

2019-09-05

JRA日高育成牧場のあしはらです

サマーセール サマーセミナー 北見にて

 秋風が吹きはじめ、浦河の夏も終わりました。つい最近まで、暑い暑いと騒いでいたのが嘘のようです。このまま寒くなっていくのでしょうか・・・。

 さて市場。先月下旬になりますが、サマーセールが予定どおり開催されました。私も4日間通して行ってきました。昨年に引き続き売却率、売り上げともに好調だったようです。JRAも当初の予定の頭数を購買し、残りは新設のセプテンバーセール等で揃える予定です。この原稿がアップされる頃には馴致も始まっているはず・・・。本格的な育成のシーズンに突入したという感じです。

 また、毎年恒例の獣医系大学の学生向けサマーセミナーも先月末に実施しました。今年も全国から選抜された6名の学生が来場し、私も講義などを行いました。実習は繁殖牝馬、子馬の収放牧、手入れ、厩舎作業、乗馬体験など、馬取扱いの皆さんの仕事と共通するところが多い内容のものでした。大学では馬に関する講義や実習はほとんどないことから、私たちが頑張っていろいろなことを教えていかなければ・・・と感じています。

Photo_3  そして、例年9月に開催される北海道獣医師会の地区学会ですが、今年は8月28,29日の日程でオホーツクの北見での開催でした。オリンピックなどですっかり有名になったカーリング、そして焼肉、ハッカ、帆立などが美味しい町ですね。帯広の学生の頃に何度か訪れて以来なので、本当に久しぶりでした。あの頃はまだ、ばんえい競馬が旭川、岩見沢、帯広、北見の4場で行われていましたから、北見も馬とのつながりは深い土地柄です。学会では馬に関する発表も盛りだくさんでした。また、北見工業大学が会場だったため、今話題のAI・人工知能と医療に関係したシンポジウムも行われ好評でした。内容については、学会に参加した皆さん馴染みの獣医さんにお話をうかがってみてくださいね。得する情報もあるかもしれませんよ。

 子馬たちですが、3回に分けた最後の離乳もスムーズに行われ、これといったトラブルもなく、親子それぞれで落ち着いて過ごしているようです。なお、子馬たちは今月中旬には別の放牧地に移動させて様子を見る予定です。繁殖牝馬も来年の出産に向けてのコンディション作りに入り、1歳組は育成厩舎にすっかり溶け込んでセール購買組とともに初期馴致の真最中・・・。環境が変わる中で、今後いろいろなことがあると思いますが、どの馬も寒さに負けず頑張ってほしいと思います。

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Photo_2 創傷(ケガ、キズ)を見極めよう

 今回は、創傷について少し考えてみたいと思います。

 顔、手、体、肢、蹄・・・馬に限らず、動物は様々な場所を怪我します。多くの場合、血を流すため、中には「血を見るのが苦手」という人もいるかもしれません。現場で慌てたり、あせったりすることもあるかも・・・。馬の怪我を見つけたら、すぐに獣医師に見せて治療を受け、指示に従ってその後のケアをするのが鉄則であり、決して勝手な判断で処置をしてはいけません。しかし漫然と頼りきるのでは進歩もありませんから、自分でも

 直るまで時間がかかるひどい怪我なのか

 見た目はひどそうだが、適切に処置することによって早く治る怪我なのか

など、ある程度の予測をすることは大切です。

毎度のことですが、私独自の見解で語ることを許していただくこととして、以下参考にしてもらえればと思います。

キズを観察するポイントとは

 ランダムに解説していくことにしましょう。

・まずはキズの場所に注目

 ポイントは皮膚がよく動く、伸び縮みする場所かどうかです。例えば前肢なら球節、腕節などの関節が当てはまります。馬房の中を少し歩くだけでも、傷口が刺激を受ける部分ですね。早く治すには、第一にキズの部分が速やかにつくように動かさないことが大切になりますが、関節はどうしても治りにくいです。その関節と比較すると管部や前腕では、動いてもあまり伸び縮みしないので早く治る傾向にあります。まずはどの部分にキズがあるのかをチェックしましょう。

・出血の多さで勝手な判断をしない

 皆さんご存知のとおり、体中の血管には動脈と静脈があり、それらは皮膚にも当然あります。キズの部分にたまたま動脈があって切れると、見た目よりも出血が多くなることがありますが、浅く狭いキズなら以外に問題なく治ることが多いです。逆に出血が少ない場合ですが、傷口が小さくて、外に血が出てこないことがあるので注意が必要です。皮膚の下の組織内にその血が溜まって、後で面倒なことになる場合もあります。なので、決して外見の出血量だけで状態を判断してはいけません。

・キズの深さを知る

 私たちの生活の中でも、怪我をした時に

「深そうだね、病院行って縫ったほうがいいんじゃない?」

なんて会話すること・・あると思います。馬の場合も一緒で、深いキズ、浅いキズ・・・判断の仕方は似ていると思います。皮膚の表面だけのキズか、皮膚の下の組織まで達するキズか、それを通り越して骨まで見えるキズか・・・判断が難しい場面も多いと思うので、獣医師に見てもらいながら観察して覚えるのがいいと思います。

・見える部分だけが怪我ではない

 先ほどの出血のところと関連がありますが、衝撃が大きいわりにキズが小さいばあいがあります。外から見ると1~2cmくらいの小さなキズがあり、その周囲を注意して触って違和感(例えば、水を含んだゴム風船を触ったような弾力のある感触、泡を触るような感触)があるときは要注意です。何らかの強い衝撃で内部の組織まで損傷を負っている可能性が高いです。このような時は、単にキズの表面に消毒薬を塗って包帯するだけでは治らず、場合によっては穴を開けて抜き通しするなどして、洗浄が必要なケースかもしれません。傷のある部分は、人でも馬でも触られると痛いのは共通なこと・・・蹴られないように十分注意してキズの周囲の様子を詳細に観察しましょう。獣医師に治療してもらったあとは、その後に気をつけなければならないケアの方法をよく聞いておきましょう。

・キズが広がる向きをよく見る

 向き、と言われてもなかなかピンと来ないかもしれませんね。先ほど、たとえ1~2cmの小さなキズであっても損傷は周囲に及ぶといいましたが、その損傷が傷口を中心として上下左右どの方向に広がっているかで、治るスピードが変わってくるという話です。キズができると、それを修復しようとする体の反応が起こります。皆さんがよく聞く血液の中の成分で白血球がありますよね。細菌などの有害物質と戦うやつです。その後は血小板の働きなどで傷口を修復しようとするわけですが、その時、全力で戦った白血球の残骸が膿となって外に排出されます。この膿は速やかに外に排出されるべきで、もし傷口が下向きに開いていれば、重力も手伝って自然と外に出ますが、上向きだと出るに出られず、ポケットのように残骸が溜まりやすくなるため修復が遅れます。獣医師はその状況を判断し、下向きに膿が排出されるように処置をするでしょうから、よく観察してみましょう。

・汚れ具合はどうか

 例えば、障害飛越などで馬がバランスを崩し、腕節の部分を強打する場合がありますよね。多くの場合、傷口から砂などの異物が混入するため、修復に時間がかかることが多いです。キズは綺麗なほど治りやすい傾向があり、例えば刃物のようなものでスパッと切れたようなキズは、汚れていなければ治りは早いです。傷口からの異物の混入がないかよく観察しましょう。

当てはまる条件が重なるほど

 いろいろ並べてみましたが、上手く伝わったでしょうか?少し難しかったかな?当てはまる項目が重なるほど治りが悪くなる可能性が高いと考えてください。たとえば、

「傷口は小さいが、中に異物が溜まっているようで、損傷も大きく、傷口が上向きだから、治るのに少し時間がかかるかな・・・」なんていう風にね。

事前に知識として持っておくと、見てもらうときに、伝えるべきことが的確になってきます。獣医さんの処置を見ながら、どうしてそうしているのかの意味を理解しやすくなります。そしてあなたが適切なケアをすることで、愛馬の怪我も早く治るかもしれませんね・・・。

今回もお付き合いありがとうございました。

2019-08-01

JRA日高育成牧場のあしはらです

暑さと長雨

 8月になりました。今年の北海道は場所にもよりますが6月は天気も良く、雨が少ない日が続きました。このまま暑い夏かと思いきや7月は曇りや霧雨の日が多かったですね。そしてここにきて異常な暑さ・・・体が参っちゃいます。一方、西日本に目を向けてみると、梅雨の時期から災害級の豪雨のニュースを聞くことが多かったですね・・・。そして8月は35度以上の猛暑が続くようです。このようにここ数年、偏った気候の年が目立ちますが、北海道では5月の暑さと少雨の影響で、また九州方面は相次ぐ長雨により農作物にも影響が出ているようです。

 関連があるかは別として、北海道の牧草の収穫は、昨年に比較して、今年は早めに進んだようですね。少し待って、収穫量を多くしたい、でも待ったせいで雨に当たると後悔するなんていう、微妙なところがあるものですが、気候が不安定な中、このような判断はとても難しくて、これからの経験が大事になってくるかもしれません。台風のニュースも例年に比べてあまり聞かない気もしますが、油断禁物ですよね。日頃からできる範囲での備えをしておくのが無難でしょう。

 さて市場は、セレクト、セレクションまで終わりました。両市場とも昨年に負けず劣らず盛況でした。セレクトセールは例年どおりに高額の取引馬が続出し、記録的な売り上げでした。またセレクションセールも売却率、額ともに好調でした。JRAも事前の下見を実施するなどして、予定どおりの頭数を購買することができました。なお、セレクトの当歳については、下見の時間帯に興味のある産駒を中心に見せていただきました。

 また、毎年盛り上がりを見せる馬フェスタも天候に恵まれ、多くのお客様を迎えてこちらも盛り上がりました。馬上結婚式では例年どおり2組のカップルが選ばれて実施されました。その中の1組は、ご両親もこの浦河の地で馬上結婚式を行ったとのことで、会場のお客様を感動させていました。そして子供たちによるジョッキーベイビーズですが、こちらも緊迫感のあるレースが繰り広げられました。

Photo_3  子馬たちはいよいよ離乳の季節をむかえることになります。今年は8月から9月にかけて3回に分けて実施する予定です。1歳馬は、すでに育成エリアに引越しを完了。セレクト、セレクション入厩組との共同生活が始まりました。サマーセールが終われば、いよいよ馴致が開始となります。

若手職員研修

 さて、今年は20代後半のJRA若手職員(入会5年目)が生産地研修で日高育成牧場にやってきました。ようこそ日高へ・・・なんてのん気に出迎える予定でしたが、日高の生産と育成に関する講習会を実施してほしいと言われたので、急ピッチでスライドを仕上げて講義を実施しました。久しぶりに大勢の前で講義をしたので緊張しました。一般のお客様ではなく、競馬の専門家相手でしたので・・・(汗)。普段の業務が事務所や競馬場での執務中心の職員にとっては、種付、妊娠、出産、育成の現場を見たり、話を聞いたりする機会は限られているということで、できるだけ興味を持って聞いていただけるように頑張りました!妊娠から離乳までの約17ヶ月間について、コンパクトにまとめて話すことにしたのですが、時間帯も19時30分スタートと遅かったこともあり、旅の疲れのある研修生相手に上手くできるか心配したものの、有意義な講義(自己満足?)ができました。翌日には懇親会も行われ、地元牧場の青年部の方も交えての意見交換会にもなり、充実の2日間となったようです。将来の競馬を支える、立場の異なる人が交流する様子を見るのはいいものですね。今後もこんな機会が沢山あるといいなと感じました。皆さんも機会があれば、是非同じような経験をしてもらいたいです。その際は、将来の競馬について大いに語り合ってください!

脈をとる

 以前にも触れたことのある話題ですが、脈の取り方に関して、あらためて簡単にですが触れてみたいと思います。

 みなさん、体育の時間や健康チェックのときなどに、手首の手のひら側やや外に指を当てながら脈拍数を計った経験があると思います。人だと、一般的には65~75回/分くらいの人が多いのではないでしょうか。陸上などスポーツをやっている人だと40回/分くらいの人もいるかもしれません。個人差があって面白いですよね。また韓国の時代劇などを見たことのある方ならピンと来るかもしれませんが、ドラマの中で、医師が病気の王様や妊娠の可能性がある女性の手首の脈を取る場面がよく出てきます。脈を取りながら、感じる拍動の強さ、血液が流れるさらさら、ザラザラというような微かに指に伝わる感触から、病気の種類や妊娠の有無を言い当てる・・・。「本当にわかるのかな?ドラマだし・・・」と大いに疑いたくなるのですが、後で調べてみると、本当に脈の強さや打ち方、感じ方で診断をしていたようです。

 実は馬でも似たような診断が今でも使われていて、よく行うのが、馬の球節の裏側に指をあてて「指動脈」と呼ばれる部分の拍動をみるもの・・・。

Photo_6 たとえば若馬でも競走馬でも、蹄の炎症が原因で跛行することがあると思うのですが、そのとき指動脈を触ってみると、正常時と比較して拍動を強く感じ取ることができます。日常の馬の管理の中で、脚部を触って状態を確認する作業は多くの場合ルーチンとして行われていると思うのですが、例えば蹄が熱っぽいとき、球節から下が腫れているときなどに(くれぐれも蹴られないように十分注意しながら!)是非脈を取ってみてほしいです。最初のうちはわかりにくいと思うので、毎日取ってみるのがいいでしょう。次第に感覚がつかめるはずです。また、いろいろな馬の脈をとって、違いを感じ取るのもいいでしょう。

 身近に脈を取れる部分は他にもあります。心拍数は聴診器を使い胸の部分に当てないと聞くことができないと思っている方・・・以外に多いと思います。人に触られることに慣れていない、顔を触られるのを極端に嫌がる馬では少し難しい(こちらも十分に注意して!)と思いますが、馬の顎の部分で脈を感じ取れるところがあります。

Photo_5  写真を見ていただければと思います。やや強めに押すように指を当てると感じる場所があるはず・・・。時計を見ながら心拍数を計ることができますよ。私たちが手首で心拍を取るのと同じような気持ちでやってみてください。

装蹄師や獣医師と話をしながら

 跛行の診断は獣医師や装蹄師に任せるべきですが、自分なりに何らかの異常を感じとれるようになったうえで、装蹄師や獣医師に相談すると、いろいろな面で理解を深めやすくなると思います。蹄に原因があるようなら、装蹄師さんによる削蹄などの処置でよくなることもありますし、触っただけでは原因がわからないときは、獣医さんが指動脈の状態を確認した上で、適切な方法で診断してくれるかもしれません。こういったことは、お互いに話ししながら原因を探ることで早期解決につながります。

そしてプラスα

 今回のように、獣医師や装蹄師と話をする機会ができたら、日頃疑問に思っていることを直接聞いてみるといいと思います。例えば、

「先生、診察のときに肢を触るけど、どこをどんな風に触っているんですか?」

などと、聞いてみるとか・・・。優しい先生なら、いろいろ説明しながら、例えば関節の曲げ方とか、屈腱部の触り方を実践してくれるかもしれませんよね。

「競走馬と育成途中の馬では、骨折するところは微妙に違うものなの?」

なんて質問すれば、指差ししながら骨折する部分の説明をしてくれるかもしれません。

 常にプラスαを狙っていきましょう。もちろん病気のことだけにこだわらないで、日常管理に関する素朴な疑問でもいいと思いますよ。

 あなたの気持ちしだいでいろいろ得することが増えるでしょうね・・・・。

 今回もお付き合いありがとうございました。

2019-07-04

JRA日高育成牧場のあしはらです

セール、シンポジウムそして馬フェス

 7月になり、北海道の一番よい季節になってきました。今月は行事が沢山あります。

 前半ですが、市場関係では、九州、八戸がすでに終了しましたが、セレクト、セレクションと続けて実施されます。私は例年どおり、セレクトの1歳、当歳市場とセレクションセールに行く予定です。またセレクトとセレクションの間になりますが、生産地シンポジウムも開催されます。生産地疾病等に関する調査研究については以前もご紹介しました。日高地区に関わる獣医師が協力し、3年単位で実施しているものですが、今年はその3年の節目となる年に当たり、研究成果の報告が行われるということで、どんな話を聞けるのか楽しみにしているところです。そして、月末には浦河馬フェスタが実施されますよ。こちらも毎年恒例のイベントですが、馬上結婚式やジョッキーベイビーズの地区予選など、日高ならではの行事が盛りだくさんです。夏休み期間中でもありますし、遠くにいらっしゃる方でも、足を伸ばしてみるのもいいと思います。

 1歳、当歳ですが、穏やかな天候の中、みんなそれぞれ元気に過ごしています。

Photo

Photo_3 当歳では、早生まれが200kgを越え、1歳では半分以上が400kgを越えて大人っぽくなってきましたね。それぞれ、順調に成長しています。そんな当歳、1歳たちと身近に触れ合える恒例の見学バスツアーですが、今年も開催中です。JRAホームページ内の日高育成牧場のコーナーを検索していただくと詳細が載っています。季節により実施するイベントも異なりますので、事前に確認をお願いします。そして、どうぞお気軽にご参加ください。お待ちしております。

Photo_2 昨日まで大丈夫だったのに・・・

 さて、今回は「当番」にスポットを当ててみることにします。学校なら、掃除当番とか、日直当番とかありますよね・・・ん?今はもう、そんな呼び方ではないのかな?そんな「当番」について、皆さんはどう思っているのでしょうね。

 馬取扱いの仕事をしている現場では、「当番」という言葉が頻繁に飛び交い、皆さんが実際に勤務するようになると、交代で役割が与えられるかもしれません。たとえば、「飼いつけ当番」なんていうのが一番初めに思い浮かぶかもしれませんが、他にも調教監視当番といって、競馬場やトレセン、育成場など調教を行うところでタイム計測をしたり、事故の対応をしたりするものがあります。また、深夜早朝に起こるアクシデントなどに対応する早出当番、出産の季節には分娩が近くなると交代で監視する当番、他では例えば獣医の場合だと、競馬開催当番と言って、競馬の前日や当日に病気になって出走できない馬に対応する当番もありますし、検疫当番では、トレセンでは入厩するときにいくつかの条件があって、例えば指定の予防注射と指定の期間内に投与しているかとか、体のどこかに異常がないかをチェックする当番もあります。いずれの場合においても、重要な業務であり、競馬、厩舎、牧場関係者は100%に近い万全の体制で準備をして、様々な当番をこなしながら馬を管理しています。とは言っても、そこは馬という生き物を管理するわけですから、「絶対」とか「完璧」はなく、前日の夜に突然調子が悪くなる馬が出たり、イベント当日の朝に思わぬアクシデントに見舞われたり・・・なんてこともあるわけです。で、「昨日まで大丈夫だったのに・・・なんで今日になって・・・」なんてせりふも出てくるのですが・・・。

どんなことが起こる可能性があるか想定してみる

 漫然と当番をやっていても進歩がありません。上手くいかないことが続けば苦痛になることも・・・。なので、どんな馬の何に関する当番を引き受けたら、どんなアクシデントが起こりうるか、事前に頭に入れておくことが大切ですね。そうすれば、毎日の馬との生活の中で、何をしておくことが大事かわかってくるはずです。そして苦痛だった当番も普通にできるようになるでしょう。

 では、どんなことに気を配ればいいのかですが・・・。

一番大切なことは「厩舎、馬房を常にきれいにしておく」です。

 なんだ、そんな単純なこと?・・・しっかりマニュアルを作って覚えて仕事をするものじゃないの?・・・と思うでしょう?でもこれが一番大切!

 私は現場の獣医のときに取り消し当番というのをよくやりました。レースの直前に病気や事故で出走できない可能性がある馬の診断をするというものですが、ある時、厩務員に呼ばれて右前の球節が腫れているということで駆けつけたことがありました。確かに診ると言われた部分に小さな傷があって、腫れて痛がっていたので、発熱があり、感染して化膿しているケースと診断して、予定のレースを取りやめるようにアドバイスしました。一連の手続きと治療が終わり、あらためて馬房の中をよく調べてみました。すると、比較的新しいと思われる馬が蹴って穴があいた跡があり、その近くに突起物があったのです。あくまでも推測に過ぎませんが、その突起物に引っかかって、怪我をして軽い感染を起こしたものと私は考えました。事前に馬の最終チェックをするときに、馬だけでなく、馬房の中の様子をよく観察していれば、もしかすると防げたことだったかもしれません。馬房の出入り口や通路、厩舎の出入り口にも、ついつい、いろいろな道具を置いてしまいますが、何かの拍子で蹴ったり、引っかかったりする原因にもなりかねません。釘や金属物などが落ちていて踏んでしまうと、蹄を痛める可能性もあります。

 どうでしょう。「馬房を常にきれいにしておく」ということを考えるだけで、周囲を見渡しながら、そのときにやらなければならないことが沢山思い浮かんでくる・・・。このようなことは、皆さんが経験を積むことで良い馬の管理につながっていくものなんでしょうね。

経験から想定してみる

 病気、事故といっても、数え切れないほどいろいろなケースがありますが、レースの直前やセールの直前に「よく起こる」病気、アクシデントというのがあると思います。いくら優秀な人でも、すべてを覚えることは不可能です。でも、こんなときに、起こる確率の高いことってどんなことだろうと、たえず疑問を持ちながら、一つ一つ知識として積み上げていけば、効率的に覚えることができると思います。これらに関する知識は、何度も言いますが、それまで培った経験から身につくことが多いと私は思います。どんなに小さな経験でも、粗末にしないで、頭の中に入れる、私のように覚えるのが苦手な人は、必要に応じてメモを取って整理しておくと、将来の宝ものになると思いますよ。当番は何かとストレスを感じやすい業務ですが、日頃の努力の積み重ねと、ほんのちょっとのコツで克服できます。そんなことを伝えたかったです・・・。

 どうか、みなさんもいろいろな経験を積んで宝物を増やしていってください。

今回もお付き合いありがとうございました。

2019-06-06

JRA日高育成牧場のあしはらです

生産地研修・品評会・栄養に関する講習会

 北海道トレーニングセールも無事に終了し、令和元年となって早くも6月に入りました。時の流れは本当に早く感じます。この時期は出産、種付けも一段落で、育成馬もいないことから、なんとなくオフシーズンと思われがちですが、様々な団体や他部署から研修生が入れ替わり訪れる時期であり、またセールを控えた1歳馬の品評会が行われる季節でもあります。また、来年の育成に向けての管理計画や研究のまとめ、新規計画の作成なども実施しています。

 先月末の話になりますが、栄養に関する講習会が浦河で開催され、私も足を運んで聞いてきました。多くの牧場関係者が熱心に聞き入っていましたよ。講習後の質疑応答も活発に行われ、普段から馬や放牧場管理に苦労している、いろいろ手を加えたいと模索している様子がうかがえました。皆さんも、もし身近な地域で類似の研修会や講習会があれば、是非参加して知識を増やすといいと思います。

Photo  一方、競馬に目を向けてみると、6.15から北海道シリーズ函館開催が始まりますね。皆さんの所属している牧場、また個人的に関心のある牧場で生産された2歳馬の新馬戦はすでに始まっています。私としては日高育成牧場出身の2歳馬にも注目したいところ・・・。

 こうして考えると、いろいろな面で気分を変える季節といってもいいですね。緊張の4月、試練の5月、そして飛躍の6月・・・なんて、勝手な表現ですが、いずれにしても、皆さんにとって、どうかいい季節になってほしいと心から願うばかりです・・・。

 そして、当歳馬と1歳馬も、それぞれのペースですくすくと成長しています。放牧地の緑も鮮やかになってきて、美味しい草を食べながら日に日に成長し、たくましくなっているように見えます。原稿を書いているこの日は、子馬の成育が順調かどうかの馬体検査が行われていました。

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以前にも書いたことがありますが、生後3~4ヶ月の頃は、何かと体と脚部の成長のバランスを崩しやすい時期でもあり、特に肢勢や蹄の形に注意を払いたいところ・・・。この日も何頭か、蹄の形などから、肢勢に注意ながら観察すべき子馬が見られましたね・・・。皆さんも、日頃から愛馬を様々な角度から見て、できる範囲のケアをしてあげてください。

 最近は天候の変化も極端で、時折起こる自然災害に苦しめられることも多いですが、今年は穏やかに過ごせるよう願いたいものです。

Photo_3

Photo_4 自分の体温

 今回は体温について考えてみたいと思います。「え~、体温?つまらないなあ・・・」なんて言わずにちょっと読んでみてください・・・。

 皆さんは馬の体温が何度かご存知でしょうか?

 その前に自分の体温が何度か・・・知っていますか?

 私は36.0度くらいだったと思いますが、正直しばらく計ったことがないです。

お恥ずかしい限りで・・・。

 人の体温の場合は37度を境に、熱があるかないかを判断することが多いですが、

 「まあ、測ったことはあまりないけど、36度5分くらいかな」

 「俺は低めだから、35度台だよ」

 と勝手に決めつけている人が多いのでは・・・。

 確かに個人差は大きいと思います。熱がある場合、38度以上になるとふらふらする人もいれば、意外と39度でも平気な顔をしている人もいるでしょう。でも40度になると、さすがに頭が燃えるように熱くなって、立っていられなくなることが多いはず・・・。ここで考えてほしいのですが、普段の体温が35.4度の人と36.6度の人がいたとして、どちらも39度の発熱を認めたとき、同じように考えていいのかということです。単純に1度以上の差があるので、やはり35.4度の人をより注意して観察する必要がありますよね。たった1度と軽く考える人もいるかもしれませんが、例えば、お風呂の温度を測ってみると実感できると思いますよ。「41度・・・温いかな」、「42度・・・丁度いいかな」、「43度・・・熱くて入れないよ」・・・1度違うだけで熱かったり温かったりするもので、実は1度の差は意外と大きいのです。なので、日頃の体温が35.4度の人にとっては、37度丁度くらいでも十分「発熱している」といえるかもしれません。

実際の馬の体温を知ろう

 馬の体温は一般的に37.8度から38.2度が平熱とされていますね。診察するときに、馬の場合も体温をまずとってもらいますが、おおむねこの範囲で収まっていることが多いです。また、年を取った馬は体温が低く、若馬では高めなんて言われることが多いですが、これも意外といい加減です。以前、日高育成牧場の繁殖牝馬の体温表を眺めたことがあって、一番低い馬で37.4度、高い馬で38.1度と実に0.7度の差がありました。ある時、日常の平均体温が37.4度の馬が38.0度だった日があったんです。その日は、少し元気なくて、食欲もありませんでした。まあ、1日様子をみただけで元気にはなりましたが、おそらく38.0度でもこの馬にとっては、「発熱」の状態だったのでしょうね。馬は移動するときに、長距離であれば必ず馬運車に乗りますが、降りた直後の体温は高めに出ますね。そんなときも、普段のその馬の体温を把握したうえで、しっかりチェックすべきでしょう。鞍をつけて、人がまたがり、指示どおりに走るということは、馬にとっては人が思う以上にストレスに感じることかもしれません。また、いろいろな要素が重なって、騎乗後に発熱する馬もいると思います。馬のちょっとした仕草の変化に十分に気を配ってくださいね。

なぜ発熱しているのか

 当たり前の話ですが、長く世話をしていればしているほど、馬のわずかな変化に敏感になってくるものです。発熱したら、自分なりの推測をたてて、何が原因なのかを探ってみましょう。正確な診断は獣医さんに任せるとして、普段から体を触る、歩かせるなどして、自分なりに異常を探してみましょう。以前ここで書いたことがありますが、甘い先入観で診断を誤るケースもあります。いつもは窓から顔を出して元気にしているのに、馬房の中でじっとしている・・・。そんな姿を見かけたら、まずは発熱を疑って、いろいろな角度から観察する習慣をつけましょう。

 当たり前で基本的なことをちゃんとやる・・・大事なことですよね。

今回もお付き合いありがとうございました。



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