2019-12-19

JRA日高育成牧場のあしはらです

冬本番

 今年のインフルエンザの流行は早かったですが、寒い毎日、皆さん体調を崩したりしていませんか?私は年齢を重ねた分、冬を迎えるたびに体力の衰えを感じています。しかしながら、このブログを読んでいる方は、若い方や馬を愛する元気で意欲的な皆さんでしょうから、余計な心配はしていませんが、とにかく最近は異常気象となることもありますから、馬だけでなく自身の健康管理にも十分に気を配ってください。

さて、日高育成牧場の育成馬ですが、進度に多少の差はあるものの、馬場内での騎乗を順調に実施しています。雪と気温の関係で写真のような1600mの馬場を使用しての調教はできませんが、800mの覆馬場、坂路コースに、乳酸値を意識しながらのトレッドミルを組み入れながらの調教が行われています。繁殖関係では、妊娠馬は分娩用の馬房および放牧地のエリアに移動して、来年の出産に向けての準備が始まりました。種付け予定の繁殖にはライトコントロールを開始し、若馬たちもそれぞれのペースで元気に過ごしています。令和になって初めての年越しになりますが、馬たちはもちろんのこと、私たちも寒さに負けずに元気に過ごしたいものですね。

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育成馬検査 強い馬づくり講習会 ウマ科学会

 先月中旬まで振り返ってのお話になりますが、育成馬の第1回目の馬体検査が行われました。調教の進捗状況と各馬の動きを見た後、1頭ずつ展示して馬体のチェックを行いました。毎年のことですが、順調に過ごしているもの、思ったように進んでいないもの、厄介な問題を抱えそうになっているものがいるのは毎年変わりませんが、例年に比べると大きな問題点を持つ馬は少ない印象でした。得られた情報はスタッフで共有して今後対応していくことになります。

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 同じく先月の中旬には、毎年恒例の「強い馬づくり講習会」が行われました。例年どおり、浦河、門別の2ヶ所で実施されどちらも盛況でした。今回のキーワードは「乳酸」。これまで単純に「疲労物質」として認識されることが多かった乳酸ですが、調教を実施しながらその値を測定することで、調教の進捗状況を考えることができる、乳酸もエネルギーとして利用されている・・・そういった内容の講演会でした。研究者からの視点、現場からの視点の両方を聞くことで、聴講した側にもわかりやすいものとなり、牧場関係者の皆さん全員が有意義な時間を過ごせたようです。

 そして、こちらも毎年恒例ですが、JRA内の競走馬に関する調査研究発表会と日本ウマ科学会学術集会が先月下旬に開催されました。多くの馬関係者が全国から集い開催され、盛況のうちに終わりました。詳しい内容については、参加された方や馴染みの獣医さんから是非情報を仕入れていただければと思います。

痛い!・・・どのくらい?

 唐突ですが、あなたは痛みに強いほうですか弱いほうですか?

私は比較的強い方だと思っています。実は過去に重い神経の病気で2年ほど悩まされた経験があって、ある程度までの激痛なら耐える自信があるんです(私の場合は背中でした。あの時は19歳と若かったから・・・今はどうかなあ)。しかしながら、単純に「痛み」と言っても、実にいろいろな種類というか特徴があると思いませんか?例えば・・・

頭が割れるように痛い

針に刺されたように痛い

お腹がしくしく痛い

歯がジンジン痛くて我慢できない

などなど、人は痛む場所や程度によっていろいろな表現をしますね。馬はものを言わないから、私たちが痛みの程度がわからないのは当たり前ですが、そもそも人と人の間でもわからないと思いませんか?頭が痛い人が2人いたとして、お互いにこんな風に痛い、どのくらい痛いと言い合ったところで、結局相手が自分と比べて痛みが強いか弱いかはわからないですよね?痛さを理解することは難しい・・・と私は思いますが皆さんはどうですか?

しかしそんな中でも私たちは、痛みのサインを出す馬の苦しみを可能な範囲で、できるだけ的確に理解して対応する必要があります。馬では疝痛を診る機会が多いですが、痛がり方も実に様々で個体差があります。でも、わかりにくくても注意したいポイントはあると思います。そこで私の考える馬の注意したい痛がり方について少しお話したいと思います。独断と偏見で語るところはいつもと同じですのでご了承ください。

注意したい痛がり方とは

 馬が病気になって何らかの原因で痛がっている・・・一番注意したいこととは?

それは場所や程度に関わらず・・・24時間続く痛みかどうか・・・です。

例えば、肢のどこかを骨折しているとします。しかもそれは骨折している肢を地面につけないほどの骨折だとします。見た目はものすごく痛そうで重症です。しかし肢を浮かせていればそんなに痛いわけではない感じにも見えます。でも一日中浮かしていると、残る3本の肢に負担がかかりそうで心配です。多くの獣医師は痛みをコントロールする目的で鎮痛剤を中心に処方すると思います。すると賢い馬では、そうっと痛い肢をついて踏み変えたりします。しかし警戒心の強い馬は寝ることもなく我慢して立ち続けます。一般に3本肢の状態が長く続くと蹄葉炎になりやすいと言われますが、賢く振舞う馬では24時間痛みが続かないように自身で工夫すると思います。で、アクシデントがない限り峠を乗り越えて、あくまでも経験的な私見ですが、良好な経過をたどることが多いと感じます。

一方、目の角膜に傷を負った馬がいるとします。競馬では前の馬が蹴り上げた砂などが目に当たって傷を負って角膜に炎症を起こすことがあります。目の創傷は意外と厄介で、感染して悪化すると治るのに時間がかります。はじめは点眼薬と痛み止めを併用して様子を見ることが多いのですが、時に炎症は思うように治まらず、24時間涙が止まらず痛がることがあります・・・。眼帯をしてこすらないように疼痛ケアしながら治療して様子を見るのですが、経過が思わしくないと、激しい痛みと重なって悪化することがあります。皆さんも結膜炎や物もらいを患い、ものすごく痛くて我慢できない経験をした方もいるかも・・・辛いですよね。目薬をさしても24時間痛みが続く・・・。馬もきっとこちらが予想する以上に痛い状況で、その痛みが原因で体の中で悪い反応が起こるかもしれません。

 このような角膜炎のように、軽ければ問題ないけど、油断すると24時間痛みを感じる可能性の強い病気は他にもあって、例えば皆さんよくご存知の疝痛、それから牝馬がかかる乳房炎、化膿性の飛節炎、重度のフレグモーネなどが挙げられるでしょう。ここで言いたいことは憂鬱に感じて痛みが持続する傾向のある病気に注意したいということです。油断することなく、馴染みの獣医さんとよく相談しながら対応すべきでしょう。

痛い仕草を分析する

 多くの場合「ん?いつもと違うな」と感じて「どこか痛いのかな」となるわけですが、その痛がり方を見て、気にしなくていいものなのか、深刻な状況なのかをできるだけ早く正確に察知する必要があります。

・異常に汗をかいている

・すぐ寝る

・やたらと馬房内を歩きまわる

・局部が熱を持ったままである

・触っただけで嫌がる

 こんな場面に遭遇したら、もしかすると、24時間どこかが痛いパターンの症状なのでは・・・と疑ってよく観察するべきでしょう。しかしながら、

・運動したから、暑いから、ただ汗をかいている

・疲れたから、眠いから寝ている

・見たことがないものが見えて興奮して歩き回っている

・少しずつだが解熱している

・もともと触られるのが嫌い

 それだけのことかもしれません。これらの判断力は、日頃の観察と経験を積むことで身につくようになるでしょう。馬の痛みのサインは早期発見、正確な状況把握が重要です。痛みの解釈は本当に難しくて奥が深いものですが、馬の痛みが手に取るようにわかるようになるとうれしいですよね。そうすることで、あなたと馬の心の距離が縮まりますよ!

 

今回もお付き合いありがとうございました。

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