2018-08-09

JRA日高育成牧場のあしはらです。

セール・札幌開催

 7月前半は、ぐずついた天気が続いた北海道。そして後半はむしむしした感じの日が続きましたが、8月に入りようやく落ち着いてきた感じ・・・。しかしながら、西日本その他の地域での大雨は甚大な被害でした。その後も気温40度に達する酷暑・・・。復旧作業も大変そうで、この先、日本はどうなるかと心配になる今日この頃です・・・。そんななか、この原稿を書いている今日は、久しぶりにからっとして丁度いい天気です。離乳が近づく子馬たちも元気に過ごしています。また、先月行われたセールは好成績で無事に終了しました。今月はサマーセールが行われます。昨年と少し変わったところがあって、5日間の初日はサマープレミアムセールと称して実施されますね。どんな結果になるのか今から楽しみです。競馬は函館が終了し、札幌開催となっています。毎年有力馬の集まる札幌記念も楽しみですが、やはり2歳馬の戦いぶりが気になるところ・・・。北海道の夏は短いので、皆さんも存分に楽しんでくださいね。

サマーセミナー・装蹄研修

 7月後半から8月は恒例の学生研修です。将来、馬の獣医師を夢見る獣医大学の学生や装蹄師を目指す学校の生徒が研修に来ています。

Photo

Photo_2  北海道以外の地域では、勉強に必要な馬を確保することが難しい所も多いですが、参加しやすいように夏休み期間に開催して、全国各地から北海道浦河に来てもらって研修を実施しています。馬に対する情熱は、馬取扱いの仕事を目指す皆さんと一緒で高いです。同世代の獣医師、装蹄師、栄養学の専門家などと知り合うことも重要だと思うので、何かの機会でチャンスがあれば話をしてみるのもいいかも・・・。大事な馬を管理する上で、いろいろな情報や技術を習得できると思います。私も、機会があれば学生諸君に、いろいろ教えてあげたいと思っています。

貴重な機会こそ大切に

とても珍しいことが起こったとき、

「それはたまたまだから」

「時々起こることだけど、普段はほとんどないから気にすることないよ」

と言う人もいれば、

「いい経験をしたね」

「めったにないことだからよく覚えておくといいよ」

なんて、言う人もいます。

 皆さんは馬を扱うのが仕事ですから、これまで受け継がれてきた技術を身につけてきて仕事をしているわけですが、時として一般的な理論にそぐわない馬に遭遇して、うまく扱えない、乗れないなどの壁にぶち当たるかもしれません。それをたまたまだと受け流すのか、貴重な体験と受け止めて記憶にとどめておくのかは人それぞれです。

 私は獣医としての経験しかないので、その関連の話しかできなくて申し訳ないのですが、若いとき、競走馬の麻酔師だった頃の話をすることにします。馬取扱いに直接結びつく話にはなりませんが、とりあえず読んでいただき、何かのきっかけぐらいになってくれれば・・・と思います。

 私はトレセンの現場にいた頃・・・一般診療や競馬開催とは別に馬の麻酔を担当していました。例えば骨折や疝痛でどうしても手術が必要になったときに、その馬に安全に麻酔をかけて手術のサポートをするのが仕事でした。薬を体内に入れて、手術中に馬に痛みを感じさせないように眠らせる・・・簡単に言うとそんな感じの仕事です。眠らせている間に手術をすると簡単に言いましたが、実はとても難しいことです。あまりにも深い眠りにしてしまうと薬の影響が強くなりすぎて手術中に問題を起こす可能性が高くなるし、かといって浅い眠りでは、痛みを感じたり、途中で目覚めて暴れたりする危険性があります。その「丁度いい」ところで調節するのが難しいです。また、麻酔は眠らせるだけが仕事ではなくて、麻酔から安全に目覚めさせるのも重要な仕事になります。いくら素晴らしい手術をしても、目覚めるときに興奮して暴れて、手術とは関係ないところを怪我すれば本末転倒だし、逆に眠りから覚めないと大変なことになります。麻酔師はとにかく「丁度いい」ところで外科医が仕事しやすい環境を作るのが重要になります。馬に「丁度いい」麻酔をかけるには、麻酔薬などに関するいろいろな知識と数値データをインプットしていないとできません。しかし相手は生き物で、競馬という戦う世界でストレスのかかった環境下に置かれている競走馬なので、頭に入ったデータが時としてマニュアルどおりに使えないこともしばしば・・・。麻酔中の「かかり具合」唯一知ることのできる変化は目の動きと唇の色くらいしか見ることができませんが、その微細な変化を診ながら、限られた情報を瞬時に分析しながらダイヤルを握ります(ダイヤルとは、麻酔薬の濃さを調節するダイヤルのこと。麻酔の世界では麻酔をかけることを「ダイヤルを握る」と表現することが多い)。

 以降は私の主観でものを言うことになることを前置きしますが、競走馬ではある条件がそろうと、麻酔から目覚めるときに馬が異常な行動をすることがあります。おそらく1000頭に1頭くらいの確率で起こることだと個人的には思うのですが・・・。

 ある日のこと、手術を受ける馬の事前情報をいつものように麻酔の準備をしながらチェックしていたのですが、

 「ん?この条件・・・どこかで経験しているな。たしか、昨年の同じ日に麻酔をかけた馬とまったく同じだったような・・・。」

 調べてみると、馬が違うだけで、それ以外で重なる条件がたくさんあったのです。いつも「同じ条件はないかな」と構えて麻酔を行っているわけでもないのに、その日はなぜか、虫の知らせと言えばいいのでしょうか・・・何故か気になる日だったんですね。で、気にはなるものの、いつもと変わらず麻酔をかけて、何事もなく手術は終了して、目覚めさせるための部屋で馬が起き上がるのを待っていました。

 「俺の勘が間違ってなければ・・・異常行動を起こすかも・・・」

と、考え始めるか否かのときに、馬が予定より早く目覚める気配を見せました。

「当たった!」そんなことを考える余裕もなく、馬を落ち着かせるための処置に取り掛かっていました。一瞬大変でしたが、大事には至りませんでした。後になって、

「たまたま起こることも、ちゃんと記憶しておけば後で役に立つな。」と思いました。

 麻酔は身近なことではないので、皆さんにとってはピンと来る話にはならなかったかもしれないですが、めったに起きない偶然も時と場合で必然になるということを言いたかったのです。馬を扱う皆さんも、「今日はどうして思ったとおりにならないんだろう」と悩むことも多いでしょう。その経験は、またいつか来るかもしれないから、上手くいかなくて落ち込むのではなく、貴重な経験として大事にしてください。苦労した経験を糧にして、ある日、思いがけないタイミングでその経験が役に立つこともあると思います。相手は感情を持つ馬ですから、思い通りにならなくて当たり前。根気強く向き合っていくといいと思います。落ち込まず、粘りの精神で踏ん張りましょう!

 今回もお付き合いありがとうございました。

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