2018-06-07

JRA日高育成牧場のあしはらです。

北海道トレーニングセール

 6月です。北海道は初夏、内地は梅雨・・・時期的に少し早いようにも思いますが、そんな気候ですね・・・。

 先月21、22日と札幌競馬場で北海道トレーニングセール2018が開催されました。21日は公開調教で、22日がせりでした。幸いなことに天気にも恵まれ、多くのお客様を迎えて実施され、売却の成績も史上2番目ということで、まずまずだったようです。函館競馬場では滞在する競走馬も増えてきました。夏競馬、北海道シリーズの開幕ですね。開催は今月16日からです。いよいよ2歳新馬が走りはじめますよ。今年はどんな馬が出てくるのか・・・楽しみですね!

子馬の成育も順調です

 繁殖関連ですが、来年出産を予定している牝馬の種付けが終了し、現在お腹の中での成長の様子を見ているところです。当歳馬はお母さんと一緒に放牧地を元気よく駆け回り、草を食べるようになっています。体重も早生まれ組では、180kgを超えるくらいまで成長してきましたね。また1歳馬では450kgに達した馬もいて、何だか大人の風格も出てきました。放牧の体系も全頭昼夜放牧となりました。北海道の夏は短いですが、今年は天気が良く、暑くなる長期予報の情報もあるようです。大地の恵みを受けながら、元気よく育ってほしいと願っています。

Photo 四本の足で立つということ

 今回も、当たり前で何を今更と思いながらも、人間である私たちが実感しにくそうな話題を取り上げてみましょうか・・・。

 いつものことながら唐突ですが・・・馬は四足歩行の動物ですよね。もし、4本の足のうち、1本が地面につけることができなくなって、3本足で立つしなかい状況になったときに、馬はどう感じているのか・・・そんなことを考えてみたいと思います。私たちは二足歩行ですから、そうですね・・・実感をわかせるために、部屋の中で、ハイハイする赤ちゃんのような格好をしながら考えてみてください。

 皆さんは、例えば学生のときの体育の時間や、社会人になって体力測定をするときなど、

 「片足をあげて、何秒立っていられるか・・・用意スタート!」

 体力測定、体育の授業などでの経験、1度はあるのではないでしょうか。限界まで頑張ってみよう!と言われてチャレンジ。個人差がありますから、何分間かでギブアップする人、何時間も立ち続けて、その記録がギネスブックに載る人など様々ですが、最終的には誰もが力尽きて疲れて倒れてしまうでしょう。後になって、支えていた足が軽く赤くなったり、しびれたり、痛くなったりする人もいることでしょう。

でも・・・

 「動物のように足が4本あれば安定するだろうし、楽だろうな。」

 「3本になったとしても、2本よりは多いのだから、立つのには支障がないのでは?」

 そう考えたりしませんか?

 競馬場で全力を出して走る競走馬たち。そのスピードは60km/hを超えるときもあります。そんな彼らは、人で言えば陸上選手。馬によっては、日々の厳しいトレーニングで、あちこちに故障を抱え、治療しながら走っているところは人間のアスリートと同じと言ってもいいでしょうね。パドックでは、元気に歩いているように見える競走馬ですが、中には腰や背中が慢性的に痛くて、電気治療や針治療をしながらコンディションを整えて出走していたり、限局的に関節や骨に痛みがあって、調教の度合いを慎重に見極めながら治療しつつ、出走にこぎつけていたり、ギリギリのところで戦っている馬もいるのです。期待されていたアスリートで成績が上がらず引退して、実はこんなに故障を抱えて治療しながら戦っていたという、涙を誘う話はテレビなどでよく見ます。競走馬も満身創痍で頑張っていますから、時にアクシデントが発生して、骨折や腱靭帯の損傷など重度の故障を起こすことが稀にあります。そんな時、程度によっては、痛くて足をつくことができなくなります。

 人が例えば足を骨折した場合、松葉杖を使ったり、車椅子を使ったりして対応しますが、馬は器用にそんな風にはできません。そこで「3本も足があるのだから大丈夫なのでは・・・」なんて、上述のように安易に考えたくなるのですが・・・

480kgの体重の馬がいたとしましょう。4本の足に仮に均等に体重がかかっていたとすると・・・4で割って

  1本あたり120kg

 (当たり前の計算ですが数字そのものの大きさに、驚く人もいるかなあ・・・)ですね。

 しかし、故障などで1本の足が痛くてつくことができないとなると、今度は3で割って

  1本あたり160kg

 の負担を強いられます。1本あたり40kgも増えていますね!どうでしょう。耐えるのも辛そうに感じませんか?体は天からの授かりもの。毎日の生活する中で、480kgの馬なら、足はそれぞれ120kg前後の負荷に耐えられる程度にしか作られていないので、突然40kgも増えれば大変そうです。別の機会でお話しすることがあるかもしれませんが、馬は5本の指ではなく、1本の指、中指で立っています。そしてその先端は蹄です。この蹄は実にデリケートにできていて、その中は複雑に多くの細い血管で張り巡らされており、体重のかかり具合などで、血行障害などの異常が起こらないように上手にケアをしてあげなければいけませんね。

 「でも、適度に寝たりして、休息をとりながらすごせば大丈夫なのでは?」

 確かにそうですね。私たちも足の怪我で入院したりすると、看護師さんに

 「無理しないで、休みながらリハビリしていきましょう」などとアドバイスされると思います。でも、馬の場合はなかなかこちらの思いどおりには行動してくれません。潜在的に草食動物特有の本能もありますから、「寝たら危険」の思いが自然と働いて、横にならないのかもしれません。寝起きしやすい環境、できるだけ危険なことが起きないように馬房内を整備することが大切になってくるでしょう。

 「人と同じように、ギプスを巻いたり、副木を当てたりして固定し、一時的に動かないようにさせて対応すればいいのでは」と思われる方もいると思います。

 痛めた足をケアする大事な処置ですね。しかし、ここで頭に入れてほしいことは、馬の皮膚がとてもデリケートだということです。ギプスや包帯が擦れて、化膿しやすいです。こちらが都合よく思うような姿勢でいてくれないので、こまめな巻き替えと清潔な環境づくりが大事になってきます。

 「痛み止めの薬を飲ませながら上手くコントロールすればいいのでは」

 なるほど、これも重要な処置ですね。傷めた部分のケアしながら、痛み止めを飲ませれば回復も早くなります。しかし、あせると事故も起こります。人でもそうですが、馬も痛みを忘れるときがあるんですよ。楽になって直ったと勘違いして動きすぎて、患部が悪化する・・・なんてこともあるので注意が必要です。また痛みにもいろいろなパターンがあって、足を動かすときだけ痛いときや、24時間じわじわ痛いときがあります。痛がり方や程度でケアの仕方も変わってきますから見極めが大切です。

 なんとも悲観的な記述が続いて不安にさせてしまいましたね・・・。今は獣医学も進歩してきて、いろいろな技術や治療などで上手くコントロールできるようになっているので、決して心配し過ぎないでください。よほど酷い怪我でない限りは大丈夫ですから!

 ここでは、

  4本の足で立つからこそ、気をつけなければならないことは多い

 知っておくべきことが多い・・・そんなことを伝えたかったのです。誤解がないようにお願いします。馬を取り扱う立場になると、様々な危機に直面している馬の世話をする機会もあると思います。馬取扱い初心者の人も、これから、たくさん経験を積んで、必要な知識を吸収し、ベストなケアをしてあげられるようになりましょうね。

 今回もお付き合いありがとうございました。

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